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世界的な開発競争

2024年1月2日
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約 3 分

量子コンピュータに関する国内企業の動向

前回は、世界中の企業で量子コンピュータの開発競争が起きていることをお話ししましたが、日本でも量子コンピュータの実用化を見据えた企業が続々と登場しています。

2018年5月には大手素材系メーカーのJRSと三菱ケミカル、そして大手銀行の三菱UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループが慶應義塾大学と協力し、IBMの量子コンピュータ「IBM Q」を利用して、実用的なアプリケーションの開発を進めると発表しました。

量子コンピュータに対する国内の技術投資も拡大しています。NECは2018年度中に量子コンピュータの基礎回路を作り、2023年度までに数10億円を投じて実機を開発する予定です。また、富士通は量子コンピュータの関連技術に3年間で500億円を投じるとのことです。

その他、国内の主な企業の取り組みは以下のようなものです。

企業名 主な取り組み
NTT・国立情報研究所など 光の量子力学的な特性を利用した「量子ニューラルネットワーク(QNN)」をクラウド経由で無償提供
NEC 2023年までに「量子アニーリングマシン」※の実用化を目指す
富士通 量子現象を模倣したコンピュータ「デジタルアニーラ」を利用したサービスの提供を開始
日立製作所 「CMOSアニーリングマシン」※を開発、クラウドサービスとして公開

※「アニーリング」とは量子コンピュータの方式のひとつです。他に「量子ゲート方式」がありますが、詳細はまた別の記事でお話しします。

日本勢は基礎研究では先行していたものの、商用化では海外に比べて出遅れていました。しかし政府も2018年度から大学などの研究支援を強化する方針で、産官学の連携により巻き返しを狙っています。

量子コンピュータ開発は国家プロジェクト

量子コンピュータの実用化に向けて、近年では企業のみならず、各国の国家プロジェクトも動き始めています。

例えば、EUでは2019年から10年間に10億ユーロ(約1300億円)を量子技術に投資する予定である他、米国では今後10年間で、量子技術の研究者育成のために、およそ13億ドル(約1500億円)の財源を投資する法案(国家量子イニシアチブ法)の制定を急いでいます。

また中国では2020年に、総工費なんと100億ドル(約1兆1000億円)をかけて「量子技術研究開発センター」を開設する予定です。

日本でも、内閣府や経済産業省が量子コンピュータ関連の研究分野に数10億円~100億円規模の予算(2018年度)を申請するなど、実用化に向けた動きを加速させています。

このように現在、量子コンピュータの開発は企業間の競争を超えて、国家の威信をかけた争いに発展しています。

この記事を書いた人

下河 有司
■ 東京大学で博士号を取得(専門は物理工学)
■ 東大生産技術研究所の博士研究員
■ 東京電機大学の非常勤講師
■ ITエンジニア
を経て
■ 現在、社会人学習塾「クリエイティブ・サイエンス」を運営。科学を学び直したい大人の方を支援しています。