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ソフトマター物理学とは?

2024年1月2日
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約 3 分

突然ですが、あなたはスイーツはお好きですか?

パフェに乗っているプリン、あんみつに入っている寒天、フルーツが入ったゼリー…おいしくてついつい食べ過ぎてしまうものには柔らかくて触感がよいものが多いですね。

さて、こういった柔らかい物体は、私たちが日常でよく目にするものです。

なんでも研究対象にしてしまう物理学者が目を付けないはずがありません。さぞかし長い研究の歴史があるかと思いきや、硬い物質に比べて、意外にも最近になって注目され始めた分野です。

高分子(ゲル)や液晶なども含めて、柔らかい物質を扱う分野は現在では「ソフトマター物理学」と呼ばれています。

西暦1600ごろにアイザック・ニュートンが力学(物体に働く力や動きを計算する学問)を確立して以来、物体を「剛体」(rigidbody リジッドボディ)と見なして計算する手法が次々と開発されて行きました。

剛体というのは、力が加わってもまったく変形しない物体のことです。現実の物体は、多かれ少なかれ力が加わると変形するので、剛体は非現実的な物体ではあります。

でも質量だけを考えて大きさの無い「質点」と比べたら、だいぶ現実味のある考え方ですよね。

実際、金属などの硬い物体を剛体と考えて計算すると手計算でも割と簡単に、よい結果が得られます。

しかし、力が加わったときに簡単に変形してしまう「軟体」(softbody ソフトボディ)の場合は、そうはいきません。何かにぶつかると形が変わって、そのあとの運動の計算がとても難しくなります。手計算だと、もう絶望的です。

しかし、現在の私たちにはコンピュータという強い武器がありますね。

手計算で無理ならコンピュータに解いてもらうのは、もはや常套手段です。

今回の動画は、同じ立方体を落とした場合でも、「剛体」として計算するか、「軟体」として計算するかで動きがどう違うかを比較したものです。さっそく動画を見てみましょう。

 

剛体の場合は、サイコロを落とした時のようなゴロリと動くイメージですね。

一方、軟体はゼラチンやプリンを落としたときのようにボヨヨンと跳ねる動きになります。

こういったプルプルした柔らかい物体の動き(ソフトボディ・ダイナミクス※)はBlenderという無料ソフトを使えば、比較的簡単に計算してくれます。

皆さんも興味があればぜひ試してみてくださいね。

※ 比較的新しい分野ということもあって「軟体の力学」よりも「ソフトボディ・ダイナミクス」という呼ばれ方が一般的のようです。たしかに軟体って言うとタコみたいな軟体動物を思い浮かべてしまうので、私もソフトボディの方がしっくりきます。あなたはいかがでしょうか?

この記事を書いた人

下河 有司
■ 東京大学で博士号を取得(専門は物理工学)
■ 東大生産技術研究所の博士研究員
■ 東京電機大学の非常勤講師
■ ITエンジニア
を経て
■ 現在、社会人学習塾「クリエイティブ・サイエンス」を運営。科学を学び直したい大人の方を支援しています。